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ヴォーカル処理について
生のヴォーカルを処理するには、正しい知識と、どのような効果をつけたいか?と言うクリエイティブな両方が必要になってきます。
編集からEQやコンプレッションの追加まで、ボーカルミキシングをやっていくなかで、何かを見落としていないかもう一度考えてみましょう。
リードヴォーカルの処理13選
1.コンピング処理
コンピングとは、ヴォーカルテイクを3〜5トラック録音した場合に、各トラックの良い所を抜き取り、つなげていく処理のことを言います。
用意された複数のテイクの中から最適なヴォーカルパートを作り上げることで、ベストテイクを作り上げていくのです。
こうする事で、まとまりのある自然なサウンドを構築でき、全体的に最高のパフォーマンスを構成することができます。
コンピングの編集作業の基本は、ボーカリストが歌っていない部分を削ったり、突出したブレスを編集したりする作業が一般的です。
ブレスのカット量は音楽のスタイルにもよりますが、最終的にはミックスの中でどのように聞こえるかにより決定します。
処理を簡単に行うには、RXシリーズのDeBreathのようなプラグインを使えば、ブレスの編集は簡単に調整することができます。
コンピングは必ず最初に行います。
この工程でのでき次第で、後の処理が台無しになる場合もあるのです。
2.ピッチ編集
ヴォーカルの演奏には、ピッチやチューニングに問題がある場合があります。
完璧なピッチ編集やチューニングでは、機械的になり、自然さを失う場合がありますから、ほどほどに編集します。
音程がかなりズレている場合には、ピッチ編集をしてしまうと、不自然になる場合があります。
この場合は、もう一度録音し直すのが、ベストな方法です。
ピッチ編集ソフトで重宝するのが、メロダインになります。
3.タイミング編集
ヴォーカルのタイミングを合わせることはとても重要なことです。
どんなに音程が合っていても、タイミングが少しズレるだけで、クオリティが劇的に下がります。
縦のラインをドラムなどの楽器に合わせることで、ズレが少なくなり、上手く聴こえるようになります。
タイミングの合わせ方は、ドラムのキックのアタック部分と、ヴォーカルのアタック部分とを合わせれば良い結果が得られるでしょう。
4.ゲイン調整
ヴォーカルは、ミックスの中で最もダイナミックな楽器の一つになります。
曲の中では、一番重要なパートであるため、しっかりとダイナミック調整することが求められます。
ダイナミックな録音を調整する場合は、まずクリップゲインを健全な範囲に調整します。
間違ったやり方は、コンプで潰し込んでしまうことです。
コンプを使い過ぎると、取り返しがつかないヴォーカルテイクが出来上がります。
手動でダイナミクスを調整することもできますが、waves社のVocal Riderや、先程紹介したメロダインを使うことで素早く最良の結果を得ることができます。
5.EQ処理その1
EQ(イコライザ)を使い、問題のある周波数を取り除く処理をしていきます。
ブーストで使用するのでは無く、カット方向で使っていきます。
まず初めに、ローエンドを処理します。
人間の声は80-100Hz以下ではあまり響かないので、ハイパスフィルターを使ってその範囲以下の周波数をカットしていきましょう。
もし、問題を見つけることができない方は、スイープテクニックを使い、周波数を特定してみてください。
スイープテクニックのやり方は、❶EQバンドの1つのQ値を上げて、かなり狭くします。
❷そのバンドのゲインを大幅に上げます。
❸EQの低域から高域まで周波数をゆっくりと動かしていきます。
❹不快な周波数が聞こえたら、スイープを止めます。
❺その周波数のゲインを下げて減衰させます。
❺好みに応じてQ値を調整します。
ここでEQのルールを頭に入れておいてください。
『カットは狭く、ブーストは広く』です。
つまり、引き算のEQを使用する場合はQ値を高くし(狭く)、足し算のEQを使用する場合はQ値を低く(広く)するのが良いでしょう。
ヴォーカルの場合、演奏中に周波数が変化することが多いので、ダイナミックEQが非常に役に立ちます。
このダイナミックEQ(イコライザー)は、設定されたスレッショルドを超えたときにのみ作動するレベルを圧縮し、必要なときにのみ特定の周波数に影響をさせることができます。
EQとコンプのいいとこ取りと言うことです。
ダイナミックEQはアイゾトープ社のを使用しましょう。
6.EQ処理その2
ヴォーカルの問題となる周波数を対処した後は、キャラクターを追加していきます。
例えば、ヒップホップのミキシングでは、パワー感を出すためにローエンドを重くするのがいいでしょう。
また、ロックのミキシングでは、密度の高いミックスを切り抜けるためにミッドレンジをブーストします。ポップ・ヴォーカルでは、存在感を出すためにハイエンドをブーストします。
ただし、2~5kHz付近をブーストする際には、余計な粗さを出さないように注意する必要があります。
この辺りの信号処理は自由に順番を決めてもらっても大丈夫です。
エンジニアの中には、コンプレッションをかけてからイコライザーをかける人がいたり、イコライザーをかけてからコンプレッションをかける人がいたりとさまざまです。
自分で確かめて、どんなサウンドになるかをいろいろ試してみてください。
7.ディエッサー
ヴォーカルの『さ、し、す、せ、そ』や『た、ち、つ、て、と』が目立つ場合には、DeEsserを使って取り除く必要があります。
ディエッサーは、特定の周波数帯域に特化したコンプレッサーになり、一般的にはヴォーカルトラックのハッシュネスを除去するのに使われます。
ヴォーカルテイクを聴きながら、モディエッシングする範囲を見つけ除去します。
そしてスレッショルドを設定して、気になる範囲を削るように使っていきます。
8.コンプレッサー
ヴォーカルの音色が決まったら、ダイナミクスを薄く均等になるようにかけていきます。
ヴォーカルに使うコンプレッサは数多くありますが、オプト式のコンプが自然にかかるため、そういった感じのコンプを選ぶようにします。
コンプレッサーは最も大きなピークを抑えるためだけに作動させるべきで、ヴォーカルパフォーマンス全体のダイナミックレンジを潰す使い方は避けてください。
はじめに、スレッショルドの値を決めて、メーターが2〜4dBほど振れる位置に設定します。
次に、コンプレッサーのアタックタイムとリリースタイムを設定します。
設定の仕方は、アタックが最も遅く、リリースが最も速い設定から始めます。
アタックタイムを少しずつ早くしていき、ボーカルの最初のトランジェント(アタック部分)を削るようにします。
次に、曲に合わせてコンプレッサーが効きはじめるまで、リリースタイムをゆっくりと伸ばしていきます。
一般的には、最も大きなピーク時に針が2~5dBの振れを示し、0に戻る直前に次のピークが再び圧縮されるように設定します。
これでコンプの設定はオッケーです。
9.状況を見てもう一度コンプ
コンプレッションを直列に適用することで、自然にコンプをかけることができます。
複数のコンプレッサーを少量ずつ使用すれば、一つのコンプを適用するよりも、ダイナミクスを均等にかけることができます。
1台目のコンプレッサーでピークを抑えて、2台目のコンプレッサーでボーカルを絞ることで、より安定したダイナミクスを作ることができるのです。
10.パラレルコンプレッションをかける
モダンで整ったボーカルにする場合は、パラレル・コンプレッションを使うのが一般的です。ボーカルをアグレッシブなコンプレッサー(CLA-76やdbx 160など)のAUXチャンネルに送ります。
高いレシオ、速いアタックとリリースタイム、そして低いスレッショルドで、思いっきり圧縮してみる。そして、ハイパーコンプレッションされた信号を好みに応じて少しずつブレンドしていきます。こうすることで、ボーカルを前に出しつつ、オリジナルテイクの自然なダイナミクスを保つことができます。
11. リバーブとディレイ
ヴォーカルのダイナミクスとトーンが整ったところで、空間の調整を加えます。
モノラルのリバーブとディレイは深みを出すのに適しています。また、ステレオのリバーブとディレイは幅を出すのに適しています。
一般的にリバーブやディレイは、トラックのテンポに合わせて時間を設定していきます。
短い時間であれば小さな空間を、長い時間であれば大きな空間を作ることができるのです。
ポイントは、エフェクトのディケイが次のフレーズの直前にフェードアウトするように設定します。
ディレイは、H-Delayを使用して、特定の単語やフレーズを強調するためにディレイやエコーを加えるのに使います。
後は、オケを聴きながら設定していきましょう。
12.オートメーション
オートメーションは、ボーカル処理の最後の仕上げに使います。
ヴォーカルのボリュームをオートメーションを使って変化させ、曲の展開に合わせてヴォーカルの音量を微妙に変化させます。
これは、非常に効果的な方法になります。
また、リバーブやディレイ、サチュレーションをごくわずかにオートメーションさせることで、特殊な効果を加えることもできます。
13.フェード処理
最後に、フェード処理をして完了となります。
フェード処理では、つなぎ目をわからなくする効果とノイズ対策の効果を狙っていきます。
この処理が有るか、無いかで、最終的な仕上がりが全然違ってきます。
面倒くさいかもしれませんが、最後まで根気よく作業してください。
ヴォーカル処理のまとめ
いかがだったでしょうか。
リードヴォーカルがかなり良くなったのではないでしょうか。
今回紹介した内容は、あくまでも一例に過ぎません。
自分の好きなやり方で、紹介した順番にこだわらずに最適な方法を探してみてください。
何度も処理をしていくことで、編集のスピードやコツがつかめるのではないでしょうか。
それではまた。
教えてQ&A
GarageBandのみで自作曲を作ったのですが、音声とインストが全然マッチしません。
ボーカルがすごく浮いて聞こえます。
例を挙げると、お風呂の中で歌っているような声になってしまいます。
ノイズゲートを使って雑音除去はしているのですが、エフェクトの使い方もわかりません。
やはり無料アプリの限界があるのでしょうか?それともGarageBandがクソなのでしょうか?それとも私の編集が悪いのでしょうか… ?
それとも私の顔が怖いのでしょうか?
マイクはケータイで録音しています。
あと、オーディオインターフェースなど高額なお金をつぎ込んでまで、録音する気になれません。
お金をかけずに、市販されている楽曲みたいにはできないのでしょうか?
ちなみに私は、オペラ歌手を目指しています。
本日はこのようなお悩みを解決していきます。それでは一緒に見ていきましょう。
それでは、悩みを解決して行こうかのう。
まず初めにじゃ。
GarageBandを使って何がしたいんじゃ?
オペラ歌手になりたいのか?
GarageBandなど使わずに、さっさとオペラの練習をするんじゃ。
まあ、そんなことはどうでもいいが、楽曲にヴォーカルの声がなじまず、浮いて聞こえることはよくあることじゃ。
これにはさまざまな理由があるが、次の項目を一度確認してみるんじゃ。
まず初めに、ヴォーカルにリバーブ音が入っていないか確認するんじゃ。
ヴォーカルに余計なリバーブ、残響音が入っている場合には、楽曲には絶対に馴染むことはないじゃろう。
理由は、楽曲との空気感が全く違うからじゃ。
そのため、ヴォーカルに余計な残響が入らないようにする工夫が必要になるんじゃな。
反響音の少ない部屋で録音したり、雑音が入らないように録音することが必要になるじゃろう。
ケータイのマイクなどもってのほかじゃ。
雑音が入りまくるからのう。
さっさとそんな携帯は捨ててしまえぃ。と言いたいとこじゃが、物は大切にせにゃいかん。話を戻そう。
でじゃ。次にダイナミクスをある程度揃えるじゃ。
ヴォーカルの声はダイナミクス、音の強弱がものすごい激しい楽器なのじゃ。
小さな声で歌っていたところサビになって大きな声で歌ったり、気持ちよくなってきて歌うと、声が大きくなったりするじゃろぅ?
そのダイナミクスの差を埋めることで、ヴォーカルが楽曲に馴染むようになるんじゃな。
最後に、不要な帯域はカットするんじゃな。
録音した声のデータには、不要な帯域が存在しておる。
それをそのまま放置しておくと、楽曲で馴染まなくなるんじゃ。
不要な帯域はバッサリとカットし、心も体も音声もスッキリとさせることが大事じゃな。
ここで紹介したことは、ほんの一部なんじゃ。
楽曲に馴染ませる方法はたくさんあるが、基本的なことを抑えて、まずは、やってみるんじゃな。
前よりも上達しているじゃろう。
あと、音楽にお金をかけずにクオリティを求めるのは、金魚すくいに、ギターのピックですくいに行くのと同じなんじゃ。
適切な機材はお金がかかるものなんじゃ。
安く済ませれば音楽もチープになるから併せて覚えておくんじゃな。
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