ミキシングをする前に
ミキシングに疲れて、休憩から戻ってくると、さっきまで完璧にミックスできていたと思っていた曲の方向性が間違っていることに気付いたことはありませんか?
さっきまではこれほどにもないミックスができたと喜んでいたのもつかの間、さっき作った曲を聴くとなんだかイマイチに感じてしまう。
それは、長時間のミックスで、判断がにぶり聴覚を混乱させているからです。
また、プラグインの使いすぎで、耳が麻痺して、良く聴こえるのも原因の一つとして考えられます。
ミキシングをする上で、誰もが気をつけなければならないことを知ることで、素晴らしいミックスができるようになります。
素晴らしいミックスとは
素晴らしいミックスは、楽曲がスピーカーから音を出す前から始まっています。
なので、ミックスをする前に、正しく準備をする必要があるのです。
ファイルを管理したり、トラックを楽器ごとに分けたり、トラックの色分けをしたり、テンプレートを設定したりと、これらの前準備をすることで最高のミックスをするための準備をしましょう。
また、現代の音楽制作には、プラグインエフェクトも欠かせないツールの一つになっています。
ミックスしている音だけに没頭しすぎないように気をつける必要もあります。
危険なのは、知らず知らずのうちにプラグインをかけすぎて、勢いを失い、ダイナミックレンジが無くなった過度にリバーブをかけただけの音楽になることです。
素晴らしいミックスをするまえには、準備をしてミックスに臨みましょう。
耳を守る方法
長時間のミックスは最悪の場合、耳の損傷につながり、正しくモニタリングすることができなくなります。
疲労が耳にどのような影響をもたらすのかを理解して、耳を守る方法を考えていきましょう。
エンジニアにおいて、ミックスは最高に楽しい時間になります。
その反面、かなりの体力を消費する作業でもあります。
ミックスエンジニアは、素早く、効率的に、そして効果的に作業するために必要な技術やスキルを磨くことで、疲労を最小限におさえています。
最も重要なことは、疲労が影響して、ミックスのバランスを崩す前に適切な対策を取る必要があることです。
技術的スキルがあっても、疲労感がでることで、ミックスを台無しにしてしまうことがあります。
では、どのようにしてこれらを回避すれば良いのでしょうか?
より良く、より効率的に作業を進めるための習慣を身につけように以下のことに注力しましょう。
休憩をする
ミックス作業で一番重要なことは、休憩をすることです。
あなたの体は一つしかありません。
ミックスは、細かい処理や編集作業が多く、集中力を必要とします。
適度な休憩をとることで、集中力を維持することができます。
悪いミックスは、疲労したままミックス作業をすることです。
適度なミックスは、良いミックスをするための大前提となるのです。
モニタリングレベル
大音量のモニタリングは耳に負担をかけてしまいます。
長時間大音量で聴くことは、耳を酷使しているのと同じです。
大音量でのモニタリングは、聴力の疲労を招き、ミックスバランスの問題を引き起こす原因にもなります。
大音量で再生することが習慣になっている方は、耳を守る上では重要なことなので、モニタリングレベルを下げて楽曲を聴くようにして下さい。
ミックス作業中の脳メカニズムを知る
ミックス作業中は、脳にずっと音楽を聴かせて、脳を疲れさせています。
脳は、それを一生懸命に聴こうとして、だんだんとマヒしてきます。
脳がマヒすればするほど、高い周波数を押し出す傾向があります。
つまり、低域をあまり感じられなくなってきてしまい、ミックスバランスが崩れてきます。
長時間のミックスは、脳がマヒしてミックスバランスを崩す原因になるのです。
ミックスが完璧と思って次の日に聴いてみると、昨日のミックスがウソのようにダサい作品になっていることがザラにあります。
これは、脳がマヒしたせいなのです。
プラグインでの処理でどうにかするという考え方をやめる
録音素材を適当に扱い、後でプラグインを使って素材を編集すれば良いとい人がいます。
しかし、どんなに良いプラグインを持っていたとしても、録音素材にノイズがたくさん含まれている素材は、編集しきれないのが一般的です。
その解決策はなんといっても良い録音素材を録音するということです。
例えば、クリッピング(音割れ)した素材は、いくら高度な技術を持っていたとしても、良い素材に変えることはできません。
また、高音域が不足した素材を、プラグインを使って、不足した高音域を足したとしても、やはり良い素材に変えることはできないのです。
録音する段階で、ベストな録音をし、良い素材を扱うように考え方を変える必要があります。
ヴォーカル録音の場合、マイクを変えて録音状態を確認してみたり、マイク位置やマイクまでの距離、マイクスタンドの立てる位置など、部屋の環境に合わせていろいろ実験する必要があります。
また、オーディオインターフェースを変えてみるのも一つの方法です。
『考え方を変え、適正な録音レベルで録音する』を徹底することが、良いミックスをするための最低条件だということを覚えておいて下さい。
プラグインは、あくまでもトラックを修正するのではなく、よく録音されたトラックを強化するのに使います。
遠回りしないためにも、録音環境を考えて、良い素材をミックスできるように行動しましょう。
ソロで録音素材を編集しない
ミックス中に、個々のトラックを完璧に仕上げるために、ソロで録音素材を編集して、良い音にしようと考える人がいます。
しかし、ミキシングとは複数のトラックを混ぜ合わせ、一つの作品に仕上げる必要があります。
ある録音素材が単体で良い音を出しているから、良いミックスができるというのは間違いです。
曲全体の中で鳴らしたときに、良い音かどうかが重要になります。
例えば、ソロでのスネアの音が最高にカッコいい処理ができたとします。
そのスネアドラムを全体で聴いたときに、全然抜けてこない音になっていた。なんてことはザラにあります。
単独で演奏すると素晴らしいサウンドであっても、全体で聴いてみると、その素晴らしいサウンドがちゃっちいサウンドでは話になりません。
全てのトラックがミックスされたときに出ているサウンドがもっとも重要になりますので、ソロでの処理をした後は全体で聴いてみてることを徹底して下さい。
無駄なプラグインは外す
トラックに無駄なプラグインを挿して改善しようとしても良い結果が出ないときがあります。
そんなときに、もっと素晴らしいプラグインを挿して、改善したくなるものですが、少し立ち止まって考えてみて下さい。
挿さなくても良いプラグインがあるはずです。
オーディオ素材などに、無駄なプラグインを挿しても、改善しません。
そのトラックに必要な処理は何なのかを見極める必要があります。
例えば、あるミックスのトラックにコンプレッサー、EQ、リバーブ、ディレイのプラグインを入た場合を考えてみましょう。
この場合に、納得がいかない音になった場合は、他のプラグインを挿すのではなく、今挿しているプラグインをバイパスにするか、外すことをやってみて下さい。
処理のやり方を変えることで、良い結果になる場合があります。
それでも思うようなサウンドが得られなかった場合は、トラックからすべてのプラグインを削除したり、録音をやり直すようにすれば、より良いミックスになるかもしれません。
無闇にプラグインを挿すのはやめておきましょう。
リバーブがかかり過ぎていないか確認する
リバーブは、どんなミックスに置いても重要なエフェクトの一つです。そのため、さまざまなトラックに使い過ぎてしまい、音像全体がボヤけてしまうということが起きてしまいます。
一度、リバーブがかかり過ぎていないか確認して、見直してみることを検討してみてください。
ミックスでのまとめ
いかがでしたでしょうか?
ミックスでの心構えはできましたでしょうか?
以前、私の知り合いのレコーディングエンジニアが言っていましたが、プロデューサーとアーティストはミックスエンジニアを一人にして何時間も作業をさせてからコントロールルームに入って楽曲を聴くようにしていたそうです。
プロデューサーとアーティストは、同じ曲を何時間も聴き続けることによる肉体的、精神的な疲労から解放されることで、新しい視点をもち楽曲を聞くことができるかららしいです。
長時間の作業を効果的かつ効率的にする方法を学び、ストレスや脳の疲れによる、ミックスでのミスを減らしていきましょう。
Recent Posts