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ゴリラのもくじ
EQのことについて
EQを使用して各トラックをイコライジングすることは、曲をミキシングするための不可欠なスキルになります。
EQとは、周波数をいじり、音そのものを変化させることを言います。
イコライザーはEqualizer(等しくする)の略で、音の周波数ごとに音質を整えるという意味があります。
EQを正しく設定するには、周波数とその周波数がトラックでどのように関係し合うかを知ることが大変重要になります。
イコライザーの使い方を知ってしまえば、各トラックの周波数をイコライジングすることはそれほど難しくはありません。
まず第一に、どの楽器がどこの周波数を占めているのかを確認することが必要です。
各楽器がどの帯域に周波数を占めているかを確認して、楽器同士の周波数が競合している箇所を見つけて、調整していきます。
ピンクノイズ
EQにおいて最も重要なのはピンクノイズになります。
ピンクノイズは、イコライザーを設定する上で、周波数の形を、お手本として確認することができます。
ピンクノイズに各トラックのミックスした周波数をあわせるだけでも、結構良い感じに音質が整います。
本屋さんなどで見かけるイコライザーの本に、この帯域を何dBカットし~などと書いてあるものを見かけますが、あれは何の意味もありません。
そもそも同じギターでも、音色や楽器によって周波数が変わってきます。
おおまかな周波数は同じですが、音色ごとに周波数は違うのだと思ってください。
例えばクラッシュシンバルですが、シンバル系の多くは、さまざまな種類が存在しています。
イコライザ参考本の多くは、「クラッシュシンバルはこの周波数帯域を何dBカットし~」などと特定した記載を結構目にしまが、先程も言ったように、シンバルの種類によって、音色も違うし、周波数も変わってきます。
そのため、教則本と同じにしても、良い結果が出ないことがあります。
大事なことは二つあります。
一つは、『自分の耳で音を判断する必要がある』ということです。
それともう一つは、単音だけを処理して聴くのではなく、全体の音と一緒に確認すると言うことです。
その結果、イコライザの数値をカットしすぎていたり、ブーストし過ぎていたとしても、その設定いいと確信を持って下さい。
大胆にEQ処理をしたとしても、自分が求めているサウンドならそれで大丈夫です。
最終的に、基本となるピンクノイズに周波数を近づけていければ良いのですから。
そこから、ジャンルごとの周波数に調整していくのが基本になります。
周波数をジャンルごとに合わせたい場合は、アイゾトープ社から出ている『トーナルバランスコントロール』と言うプラグインが便利です。
最終的な周波数の形を目で確認できるため、迷いが無くなります。
『トーナルバランスコントロール』を持っていない人は、ピンクノイズを基本にし、ミックス作業を行って下さい。
教則本には、ピンクノイズが書いてある本はほとんどありません。
ピンクノイズを知ることはミックスにおいて最重要となります。
また、EQを使わなくても良い音はありますので、全ての音にEQを使うのは避けましょう。
ピンクノイズは大体右肩下がりの周波数の形になっています。
基本的には右肩下がりの波形を目指して全体の周波数を作り込めば、サウンドもまとまってくるでしょう。
アナライザーなどがあれば、周波数を確認しながら調整できますので、確認してみて下さい。
ミキシングとスピーカー、ヘッドフォンについて
絶対ではありませんが、ミキシングはスピーカーで行うものです。
ヘッドフォンでミキシングをしないで下さい。
ただ、環境が原因でスピーカーが鳴らせない時もあります。
そんな時にヘッドフォンはとても役に立ちますが、モニター用ヘッドフォンとミキシング用ヘッドフォンでは大いに違いがあります。
モニターヘッドフォンで有名なのはSONYのMDR900STがあります。どこのスタジオにも置いているヘッドホンになりますが、少しローが弱いため、今の時代のミックスには向いていない可能性があります。
私も愛用していますが、おすすめするかと言われれば、おすすめはいたしません。
音の解像度が一番高い超ロングセラー商品になりますが、低音がものすごく弱いです。
今の時代にはあまりマッチしていないのかもしれません。特にダンスミュージックなどを編集するときには低音のバランスがわからなくなります。
それでもスタジオには必ず置いている定番のヘッドホンになるので、音のチェック用に使うのであれば、不便は感じません。
先ほども少し述べましたが、低音が出ないので、900STで低音のバランスをとるのは不可能に近く、このヘッドフォンで低音を調整したら、低音を強調する音楽、例えばダンスミュージックやハウス、EDMなどで低音がかなり膨れた楽曲になってしまいますので、そこを注意して使いましょう。
ミキシングで使う際のヘッドフォンは開放型がよく、密閉型はよくありません。
密閉型はレコーディング時にヘッドホンの音がマイクに入らないようにできる特徴があります。
用途に合わせて使っていけば良いでしょう。
まぁ、ミックスは最終的にモニタースピーカーという専用のスピーカーでモニターして仕上げるのが基本です。
どうしても、耳で判断つかない場合には、ピンクノイズを使ってEQを調整してみて下さい。
使う楽器を賢く選択する
EQは万能なエフェクトに見えますが、EQにもできる範囲はかぎられてきます。
同じ周波数範囲帯域を含む楽器をたくさん選択している場合、周波数が混在して、マスキング現象が起こります。
このマスキング現象は、本来鳴るべきはずの音同士がぶつかって、聴こえなくなる現象です。
楽器を楽曲に詰めていくのは良いのですが、周波数がぶつかって聴こえなくなってしまうと、本来の楽器の良さが無くなります。
ミックスするときに、楽器を見直し、周波数が偏っていないか?同じ周波数を持つ楽器を、たくさん使っていないか?をチェックする様にしましょう。
録音段階で良い音を録音する
録音した素材が悪い場合には、EQで処理をしたとしても、絶対に良い音にはなりません。
初心者の方で良くあるのが、EQで調整しようと考えて、録音段階の音をこだわらずに録音してしまうことです。
EQにも限界があり、悪い録音素材を良くすることはできません。
EQは、魔法のエフェクトではありませんので、録音素材は最高の音で録音する様に心がけて下さい。
ブーストよりもカットで使う
ブーストするよりもカットで使うほうが良い理由としては、ヘッドルームに余裕が出る。という理由があります。
ヘッドルームというのは、ミックスした最終トラックの最大音量と、0dBの間の隙間のことをいいます。
ヘッドルームに余裕があるほうが、マスタリング をする時にも、クリップ(音割れ)するリスクが少なく、また、微調整するときにも有利になります。
ブーストするよりもカットの方が良い理由の例えとしては、高域と低域をブーストする代わりに中域をカットした方が音量的には有利になります。
どちらも結果は同じですが、後者のほうがヘッドルームを残せます。
リニアフェーズEQ
リニアフェーズEQには、位相がズレないという最大のメリットがありますが、トランジェントの前に発生するアーティファクト(プリリンギング)が発生してしまうというデメリットもあります。
ノンリニアフェーズ EQ (Channel EQ(チャンネル・イコライザ))などのEQはプリリンギングの影響を受けませんが、位相ズレの影響を受けることがあります。
通常はオーディオでマスキングされてい聴こえないのですが、ミックスで音が重なり出すと、少なからず影響はあります。
コンプレッサーの前にEQを挿入してみる
EQが先か、コンプが先か?と言う議論はエンジニアの間でも言われています。
ただ、私が考えることは、EQで要らない帯域をカットしてからコンプを適用する方が理にかなっていると考えています。
コンプで持ち上げた小さい音量は、いらない帯域までも持ち上げてしまうので、EQを先に適用する方が良いでしょう。
これも、好みにはなりますが、正しいルールはありません。
テンプレートのEQプリセットは参考程度につかう
エフェクトに最初から設定されているテンプレートを使って、楽曲を仕上げていませんか?
少し待って下さい。
そこには落とし穴があります。
EQの調節は、ほかのトラックと同時に鳴らしながら行うべきです。
単音にテンプレートを適用して、プリセットをそのまま使用するのには、EQ調整は十分ではありません。
なぜかと言うと、同じベースの素材でも、音も違うし弦のアタック感も違うのです。
バスドラムにしても、さまざまな音色があり、周波数特性があります。
ジャンルによっても違ってくるでしょう。
なので、テンプレートは参考程度に使用して、できればいろいろ試してみるのが良いでしょう。
新たな発見がありますので。
EQについてのまとめ
録音を始める前に、各楽器がミックスのどこに位置するかを想像してみてください。
始める前に周波数の基本に基づいて楽器を選択すると、ミキシングとEQの工程がはるかに簡単になります。
ミックスで聴くまで、実際にはわかりませんが、何かを録音する前に、可能な限り準備をしてください。
どの周波数帯域がどの機器に問題を引き起こすかについての「正確な」ルールはありませんが、それを知っていることは大変重要になります。
したがって、パートを録音した後は、常に自分のミックスの「意味合い」から聞いて、見て、学んでください。
いかがだったでしょうか。
中にはすでに知っていた知識もあったのではないでしょうか?
色々な情報が入り乱れる音楽の世界は、自分が体感したことだけを信じていけば良いでしょ。
音楽に正解は無く、新しい手法を発見して最高のサウンドと自分が思えるのなら、その音楽も正解になります。
結局最後は自分を信じるかどうかです。
それでは、早速EQを使って曲をミックスしてみましょう。
それではまた。